どうも。コンカズ (@konkazuk) と申します。
ニュースや書籍なんかで、時々business interests という言葉を目にすることがあります。
しかし、日本語に訳そうとすると、文脈によって解釈が変わるため、どう捉えればいいのか迷ってしまうことはないでしょうか?
そこで今回は、business interests の本来の意味や使われ方を探っていきます。
business interestsとは何か?

business interests というフレーズは、ビジネス関連の文脈と政治関連の文脈とでは、解釈の仕方が変わってきます。
特に政治関連の議論では、単なる「企業の利益」という意味を超えて、特定の政策決定や政治的影響力を指す場合もあります。
① ビジネスの文脈における business interests

ビジネス関連の文脈における “business interests” は、事業利益や企業の利害関係を指すことが多く、場合によっては企業が関与する特定の事業分野を含むこともあります。
例えば、次のような例文が考えられます。
Our company must protect its business interests in the face of increasing competition.
「競争が激化する中、当社は事業利益を守らなければならない。」
She left her executive position to focus on her personal business interests.
「彼女は自分の事業利益にフォーカスするために重役のポストを降りた。」
Chinese corporations are expanding their business interests in Southern Africa.
「中国の企業は南アフリカでの事業利益を拡大している。」
② 政治的な文脈での business interests

政治的な流れの文脈において、”business interests”は、経済的利権 (ある組織や個人が特定の経済的利益を独占的・優先的に得られる権利や立場) や企業の影響力などの意味を持つことが多いです。
例えば、次のような例文が考えられます
Foreign business interests played a role in shaping the trade agreement.
「外国企業の影響力が貿易協定の形成に関与した。」
Lobbyists advocating for business interests are urging tax reductions for corporations.
「企業の経済的利権を優先するロビイストが法人税の減税を求めている。」
New labour Party has been accused of prioritising business interests over environmental concerns.
「新しい労働党は、環境問題よりも企業の経済的利権を優先していると批判されている。」
政治に関連する business interests の例

そもそも “business interests” について調べるきっかけとなったのが、チョムスキーさんの書籍に出てきた下の文章、
Economic elites and organized groups representing business interests have substantial independent impacts on U.S. government policy, while average citizens and mass-based interest groups have little or no independent influence.
なのですが、これを日本語にしてみると、
「経済的エリートや、経済的利権を代表する組織化された団体は、アメリカ政府の政策に対して独立した大きな影響力を持っている。一方で、一般市民や大衆に基盤を置く利益団体は、ほとんど影響力を持たないか、まったく持っていない。」
じゃあ、この2つの団体はどんなグループなのか?という疑問が湧いたので調べてみました。
▫️ 経済的利権を代表する組織化された団体
政府に影響を与えることを目的とする、アメリカの企業の利益を支持する勢力の例をいくつか挙げると…
🔹企業ロビー団体
⚫U.S. Chamber of Commerce
規制緩和や法人税の引き下げを推進する、アメリカ最大の企業ロビー団体
⚫Business Roundtable
200人以上もの大企業のCEOが集まる団体で、経済政策や税制改革に影響力を与える
⚫National Association of Manufacturers
製造業の利益を支持し、貿易政策や労働規制の緩和を促進する団体
🔹特定の業界を代表するロビー団体
⚫Pharmaceutical Research and Manufacturers of America
製薬会社の利益を支持し、医薬品価格の規制に反対する団体
⚫American Petroleum Institute
石油・ガス業界の利益を支持し、環境規制の緩和および化石燃料の使用拡大を提案する団体
⚫American Bankers Association
アメリカの銀行業界を支持し、金融規制の緩和や税制優遇を求める
🔹企業の政治資金団体
⚫Americans for Prosperity
大富豪の Koch Brothers によって設立された団体で、小さな政府、規制緩和、法人税の削減を推進
⚫American Crossroads
共和党寄りの政治資金団体で、大企業や富裕層に有利な経済政策を支持
⚫Priorities USA
民主党寄りの政治資金団体で、大手テクノロジー企業などから資金提供を受けてリベラルな政策を推進
🔹企業そのもの
⚫Google, Amazon, Facebook (Meta), Apple, Microsoftなど
デジタル市場規制や税制改革に関して積極的にロビー活動を展開
⚫ExxonMobil, Chevron, ConocoPhillips など
化石燃料産業の保護を目的に、気候変動対策の規制に反対するロビー活動を展開
⚫Goldman Sachs, Citigroup, Bank of America など
金融規制の緩和や政策変更を求めてロビー活動を展開
▫️ 一般市民や大衆に基盤を置く利益団体
一般市民や特定の社会集団の利益を代表し、政治的な影響を及ぼすために活動する団体の例は…
🔹労働組合
⚫American Federation of Labor and Congress of Industrial Organizations
⚫Service Employees International Union
企業や政府に対して、労働条件の改善を求める
🔹市民団体
⚫National Association for the Advancement of Colored People
⚫American Civil Liberties Union
人権、平等、民主主義の強化を目的
🔹環境団体
⚫Sierra Club
⚫Greenpeace
⚫350.org
⚫Oceana
環境保護や気候変動対策を求める
🔹社会運動組織
⚫Black Lives Matter
⚫MeToo Movement
特定の社会問題に焦点を当て、政治的・社会的変革を求める
こうした例を見るだけでも企業利益 (business interests ①)を優先し、多額の資金を投じてロビー活動を展開する企業がある一方で、企業の影響力(business interests ②)と比べ、一般市民の草の根的な支持に依存する利益団体がほとんど影響力を持たないことがよく分かります。
大きな影響力を持つ企業に対し、一般市民の声がほとんど届かない社会が固定化されてしまっているのは非常に残念な現実です。
人類はあと何年存続できるのでしょうか?
というわけで、今回は “business interests” に関する記事でした。
それではまた。
コンカズ
*この記事の英語ヴァージョンはこちらから
👉 Understanding ‘Business Interests’: How Its Meaning Changes in Business and Politics