どうも。コンカズ (@konkazuk) と申します。
世界各国から代表が集まって地球温暖化対策について話が進められる「国連気候変動枠組条約締約国会議」の第29回目、 “COP29” (11月11日 〜 24日) が南東ヨーロッパのアゼルバイジャンの首都バクーで開催されました。
石油産業が自国の経済の重要な部分を占め、さらにその拡大を計画している国が開催地であるという時点で、既にダークな雰囲気が漂っていましたが、実際に会議はどのように進んだのでしょうか?
COPの期間中に新聞で読んだ内容や、SNSでフォローしている環境問題についてポストしている人達の情報をもとに、僕なりにまとめてみました。
温室効果ガスの排出量は減っていない!
2023年にアラブ首長国連邦のドバイで開催されたCOP28では、世界各国が化石燃料から脱却していくことに合意したので、今年は地球温暖化ガスの排出量が少しは減っていると思いきや、残念なことに歴史上最高値に達してしまいました。
なんと排出量は、合計で374億トン!!! 去年より0.8%増加してしまっています!!!
さらに森林破壊など、土地利用の変化によって排出される二酸化炭素の量「42億トン」をこれに追加すると、合計排出量は416億トンに達し、昨年の406億トンから10億トンも増加してしまっていることになります。
こうなってくると、世界が1.5℃の温度上昇目標を維持し、近年ますます深刻化してきている気候変動の影響を抑えるためには、2030年までに「排出量43%の削減」が必要となり、かなり厳しい現実が私たちを待ち受けています。
石油依存国家が環境問題についての国際会議のホストって?
さて、アゼルバイジャンは、化石燃料が輸出全体の90%以上を占め、それが政府収入の3分の2を占める「石油依存国家」です。
Cop27(エジプト)、Cop28(サウジアラビア)に続いて、3年連続で石油依存国家がホストを務めたわけですが、そんな国が「化石燃料から再生可能エネルギーへの移行」について、前向きに話し合うなんて初めから無理があります。
実際、キャンペーン団体「グローバル・ウィットネス」が偽の石油・ガス企業家を装ってCOP29の最高責任者であるエルヌル・ソルタノフに接触し、その際にソルタノフが「私たちはある程度の石油と天然ガスをおそらく永遠に生産し続けるであろう」と発言している映像が会議開幕の3日前に公開され、参加国の不信感は倍増。
そして会議の2日目には、アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領が、石油とガスを「神からの贈り物」なんて表現しているレベルなので、もうどうしようもありません。
さらに極めつけが、
サウジアラビアの代表が、Cop29の公式交渉文書に直接変更を加えたという事実が判明した
という事件。
会議が延長された23日に、以前に参加国の代表者たちに配布されていた「公正な移行作業プログラム」(JTWP)の文書が、「修正履歴付き」で配られたのですが…
通常、会議でホストを務める国は、交渉文書をすべての国に同時に配布し、それを議論の対象とするため、編集不可能なPDF形式で共有するわけですが、サウジアラビアには追跡変更機能が有効なままで配布され、同国のエネルギー省の代表バゼル・アルスバイティが交渉文書の内容から
化石燃料を減らしながらも、労働者や社会全体が不利益を受けないように配慮しつつ進める
という「公正な移行」を考慮することを推奨している部分と
この取り組みは、パリ協定の目標(温暖化を1.5℃以内に抑える)に基づいて、世界的に実施されている評価プロセス(グローバルストックテイク)と一貫して進めるべき
という部分を削除したことが判明し、他国から非難が殺到。
会議でホストを務める国 (アゼルバイジャン) が、一方の国(Cop28でホストを務めたサウジアラビア)に編集権限を与え、その国が昨年の
「化石燃料から脱却して、2030年までに再生可能エネルギー容量を3倍に増やし、省エネ改善率を2倍にする」
という歴史的な国際合意を後退させることを目的とした行動をとっているため、ルールも秩序もあったもんじゃなく、会議の意義そのものが失われてしまいます。
サウジアラビアは、自国の全土で気温が上昇し、地下水の供給も減少してきているのにもかかわらず、国内の石油/ガス部門を守るために、国際的な気候交渉において進展を妨げることばかりしていて、本当にどうしようもないです。
global north & global south
「温室効果ガスの蓄積によって生じる地球温暖化の危機」という問題の解決には、かなり難しい課題が存在します。
歴史を地理的要因から見てみると、ヨーロッパは「航海に出て他国を植民地化する」「産業革命が起こる」などの出来事を通して、他の地域よりも先に発展を遂げたという事実があるので、その結果、世界は経済的に「グローバル・ノース」(先進国)と「グローバル・サウス」(発展途上国)に二極化する構造が生まれてしまっています。
*オーストラリアやニュージーランドは南半球に位置しますが、経済的・政治的には「グローバル・ノース」、同様に北半球にある 中央アジアやアフリカ北部などの一部の国々は「グローバル・サウス」に分類されることがあります。
CO₂の排出量を減らすってことは、経済活動の抑制につながるわけだから、いくら先進国が
「地球がヤバくなってきたから、みんなでCO₂の排出量を減らそうぜ!」
と言ったところで、発展途上国側からしてみれば、
「何言ってんねん。テメェらが散々今までやりたい放題CO₂を大気圏に送り込んどいて、なんでウチらがその尻拭いせんとあかんのや!」
となるわけです。
というわけで、温室効果ガスの排出量を削減するには、「化石燃料から脱却して、再生可能エネルギーへ切り替える」ことが不可欠です。そのため、発展途上国がその移行を実現できるように、先進国が気候資金として援助を提供すべきだ、という議論が強まっています。
2009年にデンマークの首都であるコペンハーゲンで開かれた “Cop15” では、「先進国が途上国に年間1000億ドル($100bn)を提供する」という目標が掲げられました。(はじめは配分額が目標に届いていませんでしたが、2020年から不足分を取り戻した結果、2022年に目標達成。)
そしてこの気候資金の配給が2025年に期限を迎えるということで、2015年にフランスで開かれた「パリ協定」 “COP21” で、「これに続く新しい気候資金の目標 “New Collective Quantified Goal” を2025年までに決めよう」ということになりました。
というわけで、
2024年の “Cop29” は、別名「資金COP」とも呼ばれ、2025年以降の開発途上国における温室効果ガスの排出削減や、気候変動への適応支援のための資金総額を決定するための重要な会議
となったわけです。
そこで、先進国側が提示した額が、前回の2.5倍の$250bn(2,500億ドル)。
かなりの額に聞こえますが、主要な経済学者たちの研究結果によると、発展途上国が気候変動によって生じる自然災害から国を守るには、最低でも$1tn(1兆ドル)が必要と報じられていたため、発展途上国側は、望んでいた額とはかけ離れてる事実を前にブーイングの嵐。
結果、たくさんの国がこのオファーを拒否したため、会議は延長戦となり、次の日へ持ち越しに。
翌日、先進国側は、$300bn(3,000億ドル) を提示しますが、まだまだ$1tn(1兆ドル) からは程遠いという事実と、 “Cop29” 開幕前にアメリカ選挙でドナルド・トランプが当選した事実からくるプレッシャー (翌年の1月に大統領として就任すると、パリ協定から手を引いて、発展途上国へのサポートを打ち切る可能性は極めて高い)もあって、発展途上国側からは怒りの声が殺到。
しかしながら、先進国側も、インフレやCovid-19、ウクライナ戦争などの影響で財政的に厳しい状況にあり、これ以上の予算を絞り出すのは無理なのが現状です。
結局は、国家財政から毎年$300bn(3,000億ドル)、そして$1tn(1兆ドル)に達するために、残りを化石燃料使用に課する新しい税金、世界銀行、民間企業などからの投資でカバーするということで、なんとか同意に至りました。
先進国と比べ、発展途上国では天候の変化が原因で起こる自然災害によるダメージが日に日に深刻化してきているため、2035年までに年間3,000億ドルという合意が「遅すぎて少なすぎる」と主張するのには納得がいきます。
ただ、新たな資金目標では、これまで公式な気候資金を提供してこなかった、中国などの発展途上国による「自主的」な貢献も可能とされているので、たくさんの国の人たちが団結して、なんとか物事が良い方向に進んでいくことを願うばかりです。
会議においての参加国の状況
イギリス
石炭利用の段階的廃止と化石燃料新規プロジェクトへの反対を強く主張。
このリーダーシップは一部の支持を得た一方、発展途上国側からして見れば「理想を現実化するための資金支援が全く伴っていない」ため冷たい目で見られているのが現実。
国内の方も、労働党政権は、保守党が14年間かけて何から何まで国をズタズタにしたところからバトンタッチしているので、国の建て直しと、戦争と、環境問題とでてんてこ舞いとなっています。
アメリカ
バイデン政権下での再生可能エネルギーの推進は評価されていますが、トランプが再選した事によって、これらの政策が全部ひっくり返されるという懸念が強調されました。
世界最大の汚染大国のうちの1つなので、気候資金が不十分であることへ非難は避けられません。
欧州連合(EU)
EUは年間2,000~3,000億ドルの気候資金提供を約束しましたが、アフリカや島嶼諸国からはやはり「必要とされる年間1兆ドルに遠く及ばない」と批判されました。
再生可能エネルギーの進展に関しては、特にドイツが評価されていますが、一方で住宅や交通部門での脱炭素化の遅れが批判されています。
中国とインド
どちらの国も「公平性」の観点から、発展途上国としての権利を強調。
中国は再生可能エネルギー投資を進めていますが、石炭利用が依然高水準で批判を受けました。
インドは低い一人当たり排出量をアピールし、先進国からの技術支援と資金提供を強く求めました。
サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)
石油輸出国である両国は、前回の”Cop28″で合意となった「化石燃料の段階的廃止」への話題から注意を逸らすために、炭素回収技術の重要性を訴えました。
案の定、再生可能エネルギーへの完全移行を求める国々から猛烈な反発があり、先進国との溝はさらに深まりました。
アフリカ諸国と後発開発途上国(LDCs)
アフリカ諸国は気候資金の必要性を強く訴え、「十分な資金がなければ、化石燃料依存を脱却することは難しい」と主張。
特に、東アフリカ原油パイプライン(EACOP)の開発が、環境団体との対立で停滞しているウガンダは「石油開発を放棄するよう求められる一方で、代替手段への支援がない」ことから、先進国の「偽善」を批判しました。
というわけで、今回の記事は以上となります。
それではまた。
コンカズ
*この記事の英語ヴァージョンはこちらから
👉 Baku COP29 Recap: Key Agreements on Climate Change