climate change

温室効果ガス削減の最前線:ネットゼロの実現可能性



どうも。コンカズ (@konkazuk) と申します。


気候変動の話になると、必ずと言っていいほど登場する言葉、「ネットゼロ (Net Zero)」。


この言葉がこれほど注目されている理由は、地球温暖化が加速度的に進みすぎて、私たちにとって「後がない状況」が刻々と迫っているからです。



今や「ネットゼロ」は、ただの専門用語ではなく、人類がこのまま気候の崩壊を止められるかどうかの分かれ道に立つキーワードになっていると言っても過言ではありません。


というわけで今回は、この言葉の意味はもちろん、そこに絡む問題点や批判なども見ていきます。

「ネットゼロ」とは?

image by sicheng-liu

まず「ネットゼロ」とは、計算式で表すと、

「排出される温室効果ガスの量」-「大気中から取り除かれる温室効果ガスの量」= 0

とする考え方です。

つまり、温室効果ガス(たとえばCO₂など)をまったく出さないという意味ではなく、何らかの方法で排出した分を相殺して、実質的にプラスマイナスゼロにするということになります。



🔹どうやって「ネットゼロ」は達成される?

ネットゼロを達成させるには基本的に、次の2つをやらなければいけません。



排出を減らす

▪️ソーラーパワーや風力などの再生可能エネルギーに切り替える

▪️石炭やガスなどの化石燃料の使用を減らす(消費を減らす)

▪️肉や乳製品の消費を減らす (家畜の餌の穀物を作るための森林伐採をやめる)

▪️地元で作られた食材を選ぶ(輸送の排出を減らす)

▪️車を電気自動車や自転車に置き換える


▪️食べ物を無駄にしない


▪️電気をこまめに消す・省エネ家電を使う

…などなど


排出を相殺する

▪️木を植える(木はCO₂を吸収)


▪️森林破壊を防止する


▪️湿地の再生(湿地はCO₂やメタンを吸収・安定化)

▪️二酸化炭素を地下に閉じ込める(CCS:Carbon Capture and Storage)

▪️ワカメや昆布を育てる(海藻はCO₂を吸収する力が高い)

▪️土壌に炭素を閉じ込める農法を採用する(カーボン・ファーミング)

▪️建物やコンクリートにCO₂を封じ込める(割と新しい技術)

…などなど



🔹「ネットゼロ」と「カーボン・ニュートラル」の違い

気候変動などの記事を読んでいると、「カーボン・ニュートラル」という言葉も「ネットゼロ」と同様よく登場しますが、これらは少し違う意味を持っています。

「カーボン・ニュートラル」は、carbon (=炭素) を neutral (=中立)化するということで、二酸化炭素(CO₂)だけに注目し、その排出と吸収がプラスマイナスゼロになっている状態を指すのに対し、「ネットゼロ」 は、二酸化炭素だけでなくメタンや亜酸化窒素など、すべての温室効果ガスを対象に、排出と吸収がプラスマイナスゼロの状態を指します。



つまり…

▫️カーボン・ニュートラル ➡︎ 対象はCO₂のみ

▫️ネットゼロ ➡︎ 対象はすべての温室効果ガス

というわけで、’Net Zero’ の方が、基準が厳しいということになります。


🔹いつまでに「ネットゼロ」は達成される予定?

パリ協定での合意で、国際的な共通目標として広く採用されるようになったネットゼロは、一部の発展途上国を除いて、多くの国々が2050年を目標年として達成を掲げています。



ネットゼロへの批判

image by geralt

さて、企業から個人まで、「どれだけ儲けたか」「何を所有しているか」がステータスになってしまっている、ある種、病的とも言える現代の競争社会の中では、物を生産する過程で温室効果ガスの排出は必然的になってきます。

そんな状況では、「ネットゼロ」なんて言われても、多くの人や企業にとっては「邪魔くさいルール」くらいに思われてるのが現実かもしれません。



人類の存続に関わる超深刻な問題」が見えなくなるほど金に目がくらんでしまっているため、大企業からそれに必死で追いつこうとする小さな会社まで、利益のためならどんな言い訳でも使って正当化しようとします。

「Net Zeroやったら、たくさん排出しても、その分あとで相殺したらOKなんちゃうん?」 


みたいな考え方でいるので、ライバルに負けないためにも「とりあえず努力しているふりだけでも見せておこう」なんていう企業が後を断ちません。

🔹「グリーンウォッシング」とは?

上に述べたような感じで、環境に配慮しているように「見せかける」だけで、実際の取り組みが伴っていない行動は「グリーンウォッシング」と呼ばれています。


「グリーンウォッシング」の例をいくつかあげると…

👉 アメリカのExxonMobilやイギリスのBPといった大手石油会社は、テレビCMやウェブ広告で「再生可能エネルギーへの投資」を大々的にアピール。しかし実際には、広告で示された投資のごく一部しか再生可能エネルギーに使われていなくて、化石燃料への本質的な依存はほとんど変わっていません。


👉 多くの航空会社は「カーボン・ニュートラル航空券」などと宣伝してるけど、業界全体としての温室効果ガス排出の削減は、ほとんど進んでいないのが現実。


👉 イギリスの銀行HSBCは、「気候変動対策に取り組んでいる」とテレビ広告などで宣伝する一方で、化石燃料関連企業への融資を続けており、広告が実態と合っていない。


👉 コカ・コーラは、「リサイクル素材の使用」や「ボトル回収の促進」を強調する広告を展開しているけど、実際にはプラスチック汚染の最大級の発生源となっている。


👉 紙ストローだけ変えておいて、他はそのままプラスチックだらけ。


👉 中身の製品自体はそのままで、パッケージだけリサイクル可能になって「環境にやさしい」と主張。  


👉 自社で作った認証マークを商品につけて、第三者の審査機関は関与していない。



こんな感じで、結局のところ「ネットゼロ」という言葉は、本来の目的とは裏腹に、企業がイメージアップを狙って商品を売るための道具として使われてしまっているのが現状です。

逆に言えば、自分たちの将来や子どもたちの未来を本気で考えるのであれば、私たち消費者が、こうした企業の商品を意識的に選ばないという姿勢が必要となってきます。


🔹「カーボン・オフセット」に頼りすぎている

オフセット(offset)とは「相殺する」という意味で、「ネットゼロ」においては、排出した温室効果ガスの分を森林保全や木を植えたりすることによって「埋め合わせ」することを指します。



しかしながら、オフセットだけに頼っていると、実質的な削減は進まず、気候変動の悪化を止めることができません!!!

「2050年までにNet Zeroを達成する」と言っても、例えば2045年まで何もしないで、最後の5年で頑張って相殺なんて考えていたら、その間にも気候変動はどんどん悪化してしまいます。



オフセットに依存しないで、実際に今から「毎年 X% は削減する」「5年後までに Z % 減らす」のような明確な目標を持ってやっていかなければ、後で痛い目に合うのは目に見えています。



みなさん、気候変動に関して考える時間をもっと増やしましょう。

もう、あとがないです!!!



以上、今回は「ネットゼロ」に関しての内容でした。


それではまた。

コンカズ

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