どうも。コンカズ (@konkazuk) と申します。
世間では「CO₂排出を減らしましょう」とよく言われますが、そもそも排出量にはどの程度の上限があるのでしょうか?
ここ10年ほど、地球には「見えない予算」があるという表現が、気候科学者のあいだで使われるようになってきました。
人類が産業革命以降に積み重ねてきたCO₂排出量によって、その多くはすでに費やされてしまっていて、気温上昇を1.5℃以内に抑えるために残された余地は、わずかしか残されていません。
この「予算」こそが、カーボンバジェットと呼ばれるものです。
そこで本記事では、この「カーボンバジェット」について、わかりやすく解説していきます。
カーボンバジェットとは何か?

イントロでも触れたように、「カーボンバジェット」を定義的に言えば、
気温上昇を一定の範囲に抑えるために、人類が今後排出できるCO₂の上限のこと
となります。
「バジェット」は日本語で「予算」を意味します。
この考え方が重要なのは、お金の予算と同じように、使える量には限りがあるからです。
たとえば、生活費には毎月使える金額の限度があります。使いすぎてしまえば、やがてお金は足りなくなります。
カーボンバジェットもそれと同じで、排出しすぎたら温暖化を安全な範囲に抑えるための余裕はどんどん失われていきます。
つまり、CO₂を無限に排出できるわけではなく、排出すればするほど「将来を生きるための残りの予算」は減っていく、という考え方です。
では、その残りはどれくらいあるのでしょうか?
最新の研究では、1.5℃目標に対応するための残りのカーボンバジェットは、条件によって異なるものの、世界全体で100〜200Gt CO₂ あたりまで減ってしまっているとも推定されています。(100〜200Gt CO₂という数字は巨大に見えますが、現在の人類は毎年約40Gt CO₂を排出しています。1Gt = 10億トン)
つまり、地球全体であと「2〜5年分程度」の排出余地しか残されていない、というイメージです。
一方で、近年の観測では、世界の平均気温が一時的に1.5℃を超えた年も報告されています。
ただし、パリ協定で示されている「1.5℃目標」は単年の気温ではなく、長期的な平均気温によって判断されます。そのため、現時点でただちに目標が失われたわけではありません。
ただ問題なのは、このままの勢いで私たちのCO₂排出が続くと、一時的な1.5℃超えがそのうちに常態化し、やがて長期平均でも1.5℃を超えてしまう可能性が高まっていることです。
カーボンバジェットをめぐる対立の背景

カーボンバジェットは、一般的に科学的な「残りの排出可能量」として理解されていますが、実際のところはもっと複雑で、国際政治と深く結びついたテーマとなっています。
なぜなら、この「残りの予算を誰がどれだけ使うのか?」という問いに、明確な答えが存在しないからです。
■ 先進国の歴史的責任
先進国はこれまで、大量に化石燃料を使いながら発展してきました。そのおかげで、現在の豊かな社会や高い生活水準が築かれてきたという側面があります。
そのため、気候変動対策においては、「これまで多く排出してきた国ほど、より大きな責任を負うべきだ」という議論につながっています。
■ 発展途上国にとっての成長の権利
一方で、インドなどの新興国や途上国の中には、今まさに経済成長を進めている国々もあります。経済発展や人々の暮らしを改善するためには、これらの国にとってエネルギーの使用は必要不可欠です。
そのため、「経済成長を続ける権利」と「気候変動対策として排出を抑える責任」の間で、大きなジレンマを抱えています。
■ カーボンバジェットと主要国
また、中国、アメリカ、EU、インドといった主要排出国の動きは、世界全体のカーボンバジェットに大きな影響を与えます。
しかし、それぞれの国では経済発展の段階やエネルギー構造が異なるため、排出削減の負担をどう分けるべきかについては簡単に合意できないのが現実です。
■公平性の問題
以上のことから、「どの国がどれだけ責任を負うべきなのか」という公平性の問題が常に議論になります。過去に多く排出してきた国の責任を重視するのか、それとも現在の排出量や今後の発展段階を重視するのかによって、各国が負うべき責任が変わってくるからです。
つまりカーボンバジェットとは、単なる科学的な残量計算ではなく、「限られた地球の予算を、どの国がどのように分け合うのか?」という、極めて現実的な政治の問題でもあるわけです。
ネットゼロに必要なこと

カーボンバジェットという「残りわずかな排出可能量」を前に、世界はネットゼロ(CO₂の排出実質ゼロ)という目標を掲げています。
しかしこの目標を達成するには、社会全体の大きな転換が必要となってきます。
その中心となるのが、化石燃料から再生可能エネルギーへの移行と、交通や住宅などの電化。そして、建築や産業の構造改革も欠かせません。少ないエネルギーで快適に過ごせる建物や、鉄鋼やセメントなどの脱炭素化が求められます。
さらに、炭素価格制度などの仕組みを通じて、経済そのものも脱炭素に適応していく必要があります。
そしてこの課題は先進国だけでは解決できず、新興国や途上国の経済成長を妨げないように、どのように排出削減を進めていくのかという国際的な協力も不可欠です。
したがって、ネットゼロとは、技術だけで達成できるものではなく、社会のシステムをのものを変える取り組みだと言えます。
以上、今回の記事ではカーボンバジェットの基本、それらをめぐる国際的な対立、そしてネットゼロに向けた課題について見てきました。
この問題は、今後ますます私たちの社会にとって重要になっていくテーマです。しっかりと記憶しておきましょう。
それではまた。
コンカズ
