こんにちは、コンカズ(@konkazuk)です。
今回の記事では、サウスアフリカ出身の「ダラー・ブランド」という名で知られているジャズピアニストで作曲家 (現在はアブドゥーラ・イブラヒムの名前で通っている) のアルバムを紹介していきます。
僕が知ってるジャズピアニスト達のリーダーアルバムは、ブルーノート録音のイメージか、スタンダードナンバーを集めて自分のスタイルで弾いたもの、ってのがほとんど。
このタイプでないことをやっているピアニストを探そうとする度に、結局モンクやジャキ・バイヤード、そしてセシル・テイラーか、マル・ウォルドロンに落ち着いてしまう。
他にも脳ミソを吹っ飛ばしてくれるようなアーティストはいないのだろうか?と、フラストレーションの内をさまよっていたところ、YouTube経由でこのダラー・ブランドさんの音楽に遭遇。
しかも、ジャズなのに、アメリカではなく、なんとサウスアフリカから…
彼のピアノ演奏を形容するなら、美しさと力強さが、地響きのように襲ってくる、とでも言いましょうか?
まさに「おお~っ、こんな風に打ちのめされるのを、待っていた!!!」ってな感じで、感動の嵐を届けてくれます。
ダラー・ブランドの音楽に出会ったのは、結構最近なのですが、正直今まで聞いてきたジャズピアニストたちの誰よりもカッコいいです。たまらんっス!!!
以来、虜になってしまい、何か仕事が一段落するたびに「自分へのご褒美」と理由をつけては、レコードをあさっている次第であります。
彼のアルバムには、オルガンを演奏しているものも多々ありますが、今回ここではピアノ演奏によるものにしぼって、5枚ほど紹介していきます。
African Piano
1970年のアルバム。
大作です。
1曲目から、大きな河川の流れが延々と続いているような感じですかね。とにかく力強いです。一度足をすくわれたら、もうなす術はありません。
そしてしばらくすると、右手によって叩きつけられる音が、稲妻のように川の流れに打ち落とされていきます。
レコードの針を途中で止めようものなら、おそらく天罰を喰らうであろう、ってほどの勢いです。
A面に4曲、そしてB面に4曲入っているのですが、この4曲ずつが切れ目なく演奏されています。
恐らくこういうのを「組曲」と呼ぶのでしょうが、この恐ろしい集中力にはひれ伏すばかりです。
彼の演奏の中に発見することができる、希望の光と苦悩が行き来するドラマは、その辺の映画を見るよりは、あなたを数100倍感動させてくれることを保証します!
興味が湧いた方は、こちらからどうぞ。
彼の音楽に入る、入門音源って感じです。👇
African Sketchbook
いきなり意表をつかれます。
一曲目 (題名AIR) がいきなり「笛」のソロ演奏です。
素朴な感じと、人を食ってかかったような演奏は、何度聴いても新鮮です。妙な懐かしささえ感じます。
続く2曲目以降が、壮大なピアノソロによる組曲になっているんで、その前に入っているこのチューンが、ちょうど前菜的な役割を果たしていて、素晴らしいです。
そして2曲目に突入。…「天才」です。
イントロが、…すごく個人的な意見ですが、「卒業式」と言った感じのイメージですかね。
静かに始まりますが、そこはブランドさん。
ただでは、卒業させてくれません。w
8曲目まで一気にローラーコースター。
またしても曲と曲の間の切れ目はありません。
壮絶なドラマがあなたを待ち受けていますが、先ほど紹介した「African Piano」が大河とすれば、今回は空中を駆け抜けている感じですかね。
あぁ〜天国って行った事ないけど、なんかこんな感じなのかも。w
B面は、6曲入り(2曲目は3つのテーマに分かれている)ですが、A面と比べたら、さらにアブストラクトすぎて、どれがどの曲なのか…
ていうか、ここまでくると、そんなことは正直どうでもいいですね。
なんか、空の上から地上を眺めているような、それともアフリカの草原の中から、空を眺めているような…
脳みそがボ〜ッとしている間に、色々と景色が変わって行き、気がついたらA面の2曲目、つまりピアノが始まった時のテーマに戻ってきて終わりを迎えた。
かなりヤバいアルバムです。オススメです。
Children of Africa
先ほどの2枚は、ソロ演奏でしたが、今回はトリオ編成。
アルバムのタイトル曲のイントロ、というか短いこの曲のテーマそのもの…すごくキャッチーです。
大好きですね、こういうの。
他のピアニストが弾いたら、おそらくポップで胡散臭く聞こえてしまうのが目に見えているのですが、この人のピアノを弾く力強いタッチには、恐ろしい説得力があるため、爽快感以外を感じることはできないでしょう。
細かい音使いが、波のように通り過ぎていく感じには、デューク・エリントンの影響が感じられます。
クラッシックアルバムです。
続いて「ASR」と呼ばれる2曲目。
バンド演奏最高。かっこいいです。
イントロのテーマが少し不吉だな…と思っていたら、やっぱりやられました。w
嵐に巻き込まれて、ボロボロにされてしまいます。最後まで自分の足元が残っているように、ただただ祈るばかりです。
3曲目も非の打ち所がありません。
ベースライン、ドラミング…すごい雰囲気が出ているなぁ、と思っている間に、ブランドさん、ボーカルで入ってきます。
そして、ソプラノサックスを挟んで、みじかいピアノ演奏。ベースソロ、ドラムソロ、テーマに沿って…
あぁ…明日仕事じゃなかったら、もうここで飲んじゃってるね。
B面もすごいバンド演奏です。もう、ありえないレヴェルです。w
ドラムのブルークスさんもすごいですが、ベースのマクビーさんなんか、もう変人ですね。
最後の曲は、彼が7年間も空手を習っている先生の名前「YUKIO」がタイトルになっています。
最後の最後まで、圧巻です。
The Journey
このアルバムはオーケストラ編成? です。
ということで、上にあげた3枚よりも音が埋まっています。(当たり前か!)
A面1曲目のスィスター・ロウジー。
ハッピーで、とてもアフリカンな曲です。
どっかのカーニバルとかで、普通に演奏されてそうな、踊れるご機嫌なナンバーです。
そして2曲目も続いてキャチーで、ハッピーなイントロ。
…と思いきや… やられました。アブストラクトでした。w
ドン・チェリーの名前がレコードの裏にクレジットされていたので、このままでは終わらない、とは思っていましたが…やっぱり。w
メンバーのソロのあと、全員が合流してトランス状態に… そして最終的にイントロのテーマに戻って、平和が再び訪れます。
…そして、B面のメインコース。1曲のみ。
20分超えの大作です。
”HAJJ” と呼ばれると同時に、別名 (または英語名?) がこのアルバムのタイトルでもある「ザ・ジャーニー」。
圧倒されます。
やや中東風の雰囲気を持つこの長い曲で、ブランドさんは、ピアノで延々と同じリフを弾き倒します。
ロックで言えば、曲のスピードこそ違えど、レッド・ツェッペリンの「フィジカル・グラフィティー」に入っている「カシミール」に共通するものを感じますかね。
バンドのバンドのメンバーが、順番にソロをとっていくわけですが、すごく不安で不吉な雰囲気を漂わせています。
素晴らしい曲ですが、天気の良い晴れた午後に、ランチを食べながら聴くような音楽ではありませんね、どちらかというと。ハハハ。
African Dawn
1983年の作品。ピアノソロ演奏です。
デジタルピアノが使われているので、今までのアルバムと音的に雰囲気が少し変わりますかね。
タイトルのDawn (夜明け)感がよく出ています。
このアルバムに、1番はじめにとりあげた、1970年発表の衝撃の1枚「African Piano」に共通するヴァイブを感じるのは、僕だけでしょうか???
実際、A面の後半では一曲目と同じリフを聞くことができますし…
(African sketchbookで聞いたフレーズも入ってるような…)
デジタルピアノって個人的には、大理石でできた建物のパーティー会場で、お金持ちの人たちがシャンペンを片手に会話を交わしているバックで、お嬢さんピアニストが当たり障りのない曲を弾いているイメージだったのですが、このアルバムを聞いて少しイメージが変わったような気がします。w
やっぱり弾く人が弾けばカッコいいです。
デジタルピアノの使用以外に、上にあげた他の4枚と違うのは、B面にスタンダードの曲が入っていることですが、自然とアルバムの雰囲気に溶け込んでいて、気持ちがいいです。
なんとも美しい、リラックスできるアルバムです。
というわけで以上です。
皆さんの中で、これを機にダラーブランドさんの音楽を聴き始めて、虜になってしまった人が多くなれば嬉しいです。
それではまた。
コンカズ
*この記事の英語ヴァージョンは 👉 こちらから