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三権分立を学びつつ、政治関連の英語表現を身につけよう。《英語汁 第29号》



どうも、コンカズ (@konkazuk) です。


今回の記事では、英語の勉強を交えながら「三権分立」について見ていきます。


中学だったか高校だったか、それさえも覚えていないですが、おそらく社会か公民かなんかの科目の時間に聞いたであろうこの言葉。

なんとな〜く記憶に残ってはいるけど、それを人に説明できるか?と言われたら、全くのお手上げですね…


心配はいりません。


ここで「三権分立」の復習を、英語の勉強を兼ねながらサクッとやってしまいましょう。

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三権分立とは?

image by Bruno / Germany

はい。まずはここで少し記憶を呼び覚ましていきます。



「三権分立」という言葉だけ聞いてピンとこない人も、日本の政治のシステムの「立法」「司法」「行政」と言われたら「あぁ、ソレね。」ってなる人も多いのでは。

この、国を運営していく3つの機関が、私たちが物心ついた頃から、すでに別々なものとして存在しているため、私達にとってはこれが当然すぎて、深く考えることはありません。



が、実際のところ、この3つの機関が別々の組織によって運営されていることにより、私たちの普段の生活の中には、ある程度の自由と権利が存在しているのであります。


というわけで、この今回の記事のキーとなる3つの英語表現を、まずここで心に留めておきましょう。

🔹立法 = legislation [ledʒɪˈsleɪʃən]

🔹司法 = judiciary [dʒuːˈdɪʃəri]

🔹行政 = executive [ɪɡˈzekjʊtɪv]

* 行政は “administration” と呼ばれることもあります。



そして、これらが行われる場所が…

立法 ➡︎ 「議会

Parliament (UK), Congress (USA), Diet (Japan)”


司法 ➡︎ 「法廷

Court


行政 ➡︎ 「政府

Government



となります。


それでは、なぜこの3つの機関が別々に運営されていることが、私たちが現在持っている自由と権利に関係があるのか?


それは、この3つにそれぞれ「パワー」があるからなんです。


私達が知っている、この「パワー」という言葉で思いつくのが…

「パワーの源」
「パワーがみなぎる」
「超能力パワー」
「ビタミンパワー」


など、なにかの「力」という意味で浮かんでくると思うのですが、

ここで言う「パワー」は「権力」の事を指します。

 


“power” という言葉が「権力」という意味で使われている例を少しあげてみると…


a man of power 「権力者
state power 「国家権力
a power struggle 「権力闘争


などが挙げられます。

state” と聞くと、「アメリカの州」のイメージがありますが、政治関連の話題では「」または「国家」の意味でよく出てきますので、覚えておきましょう。




でもって、先ほどの3つの機関の持つ「パワー」は…

🔹legislative power立法権

🔹judicial power  司法権

🔹executive power行政権」または「執行権



ということができます。

executive は、形容詞になってもカタチは変わりません。)



「〜権」なんて書かれているのを見ると「選挙権」みたいな感じで「〜する権利」って浮かんできてしまうかもしれませんが、三権分立の「権」は「権力」。


上から、「法律をつくる権力」「法律で裁く権力」「行政を行う権力」となります。




そして国を統治するその ”power” を3つの機関に分けて別々に運営させるということで「三権分立」は英語で

separation of powers” 

 
と呼ばれます。


ちなみに「権力を行使するふるう、という表現には “exercise” というボキャブラリーが用いられます。


”exercise” と聞くと、「体を動かす」とか「練習する」ってイメージがまず浮かんでくると思いますが、ここでの意味も覚えておくと後で必ず役立ちますよ。✨


というわけで、いくつかここで例文をあげておくので、声に出して読んでみてください。




The legislative, executive and judicial powers of government shouldn’t be exercised by the same person. 
「政府における権力である立法、行政、司法は、同じ一人の人間によって行使されるべきではない。」



The judge exercised the powers of his office.
「その裁判官は、彼の職権を行使した。」



The landlady may exercise her right to review the rent.
「大家さんは、家主の権利を使って家賃を見直すことができる。」


 
The Prime Minister heads the government, but exercises no statutory powers.
「内閣総理大臣は政府のリーダーではあるが、法的な権限を持ってはいない。」



とまぁ、こんな感じになります。


三権が分立されていない状態ってどんなんなん?

image by Ian Noble

先ほど、これらの「権力」が分立されていることで、私達の生活にある程度の自由と権利が存在していると書きましたが、これは逆に言えば、分立されていなかったらヤバいって事ですよね。


じゃあそれはどういう状態なのかと言うと「これらの権力全てを一人の人間が握っている」という事になります。



…ではそれがどれほどヤバいんか?というと、歴史を振り返ってみることで理解できます。

フランスをはじめ、イギリス、ロシア帝国、日本などでは、過去に「革命」 “revolution” が起こっています。



では、なぜこれらの国では、たくさんの人たちが命を落としてまで、そんなことをしなくてはならなかったのか? 

それは当時、国の統治者である国王/女王が、3つ (legislative power, executive power, judicial power) の権力を全て握っていて、国民のことなど考えずに、自分たちに都合のいいように好き放題やっていたからです。



特にヨーロッパでは、基本的に政治と宗教が背中合わせになっているので、当時「王権神授説」”The divine right of kings” なんてものが存在して…


「王室は神に選ばれて国を統治しているわけだから、神の力が宿っていらっしゃる」


なんて概念が人々の心の中に植え付けられていて…


「穀物は今年も不作やし、税金も重いけど、神様と通じている国王様のために、今日もがんばるべ!」


ってな事になっていたんです。




こんな状態になっているのでピラミッド型の「封建制度 」”Feudalism” [fjuːd(ə)lɪz(ə)m] みたいなものがあっても、「平民」”commoner” は、腹ペコでブッ倒れるまで頑張ってまうんですね。

でもって、文句を言ったら最後。



権力者は三権とも握っているわけですから、「オレってやっぱ神だよね。」ってことで、

自分達にとって都合のいい法律をつくれますし “legislative power“、それによって人を裁くこともできますし “judicial power“、それを実行して、重い税金を回収したり “executive power” することもできます。




平民を拷問したり、殺したりしても彼ら的には全然オッケーなのです。



平民たちが文句を言って立ち上がってきたら、さらに法律を変えて、もっと脅かして苦しめてやることもできますし…

俗に言われる「絶対王政」”absolute monarchy” ってやつですね。


当時の君主は「法にしばられない」”above the law“、つまり絶対的な権力を握っていたので、自分達のことを人間とも思っていないんです。

こんな理不尽な状態が続いて、


国民の王権に対する我慢にも限界が来て、


勇気を振り絞って立ち上がり、


武器を握って血を流し、


数え切れられないほどたくさんの死者を生み、


国の統治者から、これらの権利をはぎ落とすことに成功した上で…



現在の私達は、猛暑の続く夏に冷房の効いたスターバックスに逃げ込んで、フラペチーノを飲みながら英語の勉強をしたり、クソ寒い冬の日に暖房の効いたガストでノートパソコンを広げ、ホットコーヒーをすすりながらブログを書いたりすることができているわけです。

主な先進国においての三権分立の状況は…?

image by Sebastian Pichler

三権分立という言葉を聞いて、フランスの「哲学者」”philosopher/thinker” で「法律専門家」”jurist” の「モンテスキュー」”Charles-Louis de Montesquieu” の名前が、まず頭の中によみがえってきたという方も結構いらっしゃるのではないでしょうか。


彼は、フランス革命 (1789-1799) が始まるよりも40年ほど前に「法の精神」”Spirit of the law” を出版していますが、そのアイデアは、イギリスの政治から多大な影響を受けたと言われています。

ところで、その「三権分立」ですが、近代的な国家システムとして、今となってはさまざまな国々で採用されていますが、必ずしも「三権」がパリッと分立しているわけではないようです。



ここで、主な先進国を4カ国ほど選んでみたので、それぞれの国で三権分立がどんな状態になっているのか、見ていきたいと思います。

イギリス

image by Chris Robert

というわけで、まずはイギリスから。


結論から言いますと、イギリスでは三権が分立されていません


17世紀のイギリスでは…


「王室側」”royalists”  vs 「国王てめぇ議会開けよ!側」”parliamentarians” 


による、宗教がらみの血みどろの市民戦争 “English Civil War” が続いていましたが、

「ピューリタン革命」”Puritan Revolution” 

「名誉革命」”Glorious Revolution

(2つ合わせてイギリス革命 “English Revolution” と呼ばれる)



を経て、「権利の章典」”Bill of Rights” にたどり着きます。


この1689年に 議会によって提出された “Bill of Rights” に、新しい国王がサインしたことよって、

「絶対君主制」”absolute monarchy”  ➡︎「立憲君主制」”constitutional monarchy



に移り、王室は政府の決断にサインはするけど統治はしない、つまり王室の手から、国を “govern” する権力 “government” が分離されたわけです。



ところがこれだけでは、三権分立は成立しません。

イギリスの “Parliament” は、上院 “House of Lords” と下院 “House of Commons” から構成されていて、「議院内閣制」がとられています。


国民総選挙 general election で、House of Common の席を過半数勝ち取った党の党首が総理大臣が “Prime Minister” となって、国会議員 “Member of Parliament (MP)” の中から国務大臣を選出して「内閣」”cabinet” を形成して政府を統率していくので…


legislation と executive が事実上、くっついています。

最高裁判所が作られて、かろうじて ”judiciary” が分離されたのは、なんと21世紀に入ってからのこと。


それまでは「大法官」”Lord Chancellar” (日本にはないポジション)が、「上院議長」である “speaker” と、「主席裁判官」”head of judiciary” と、「法務大臣」 “presiding judge of High Court of Justice” を兼ねてやっていました。


ってことは、つい最近まで “judiciary” と “legislation” がくっついていた事になりますよね。

日本

image by Jorono

僕は「国会議員」と聞くだけで、脳ミソが勝手に「内閣」または「行政」”executive” と結びつけてしまいます。

ところが「国会議員」の言葉を分解して「国の会議にたずさわる一員」としてみたら、あれっ、会議の人やん… 。
ってことは、”legislation” の方やん。


…えっ? どうなってんの?


頭の中が混乱しましたが、結局は日本の議会の構造がイギリスと同様「議院内閣制」を適用しているため、”legislation” と “executive” が見事にオーバーラップしているんですね。




首相は “legislation” の国会議員から選ばれ、その首相のチーム (cabinet) を構成する国務大臣の半分以上もまた、”legislation” の国会議員から選ばれる、ってことは、

国会議員 = executive (本当は違いますよ。)


のイメージに落ち着いても仕方ないですよね。



というわけで、日本では日本国憲法の規定によって「三権分立」の構造ができていますが、上に述べたように「議院内閣制」を採用しているため、”legislation” と “executive” が兄弟関係になっているようです。

フランス

image by Jossuha Theophile

フランスと言えば、「フランス革命」”French Revolution”。


そして、フランス革命と言えば、「人権宣言」と「ギロチン」。

人権を無視していた人たちには、ギロチンがプレゼントされました。



というわけで、

1789年の夏、立ち上がった農民たちによって、この「フランス人権宣言」 “Declaration of the Rights of the Man and of the Citizen” がなされた2年後の、1791年憲法によって、フランスでは「三権分立」が具体化されます。



この時は、”legislation” は国民議会、”judiciary” は国民に選ばれた裁判官、”executive” は国王ということで、国王が3つの権限のうちの1つを握っていましたが、翌年の1792年には王政が廃止されて「共和制」”republic” となり、1795年憲法によって、共和政府としての三権分立が成立します。



ここで始まった「第一共和政」から、時代とともに何度も政権交代が繰り返され、1958年にド・ゴールさんが大統領になってから今に至るまでのカタチは「第五共和政」と呼ばれています。


* 政体の場合は「共和政」、制度の場合は「共和制」として表しています。




フランスもイギリスや日本と同様、議会が上院と下院とによって構成されていて、下院(国民議会)の方に力があります。

そしてこの下院から首相 “Prime minister” が選ばれるわけですが、行政 “executive” がこの首相と、国民選挙によって選ばれる大統領 “President” の両方の手によって行われるので、「二頭制」と呼ばれています。



でもって結局のところ三権分立はどうなってるんだ?って事ですが…

大統領は国民議会を解散する権限を持っていますし、首相も国民議会によって決まった法律に対して拒否権 “veto” を持っている。”judiciary” も “legislation” で通った法案の合憲性をチェックする権限を持っている事などから、三権がパリッと分立しているわけではなさそうです。


ちなみに “veto” [viːtəʊ] は名詞で「拒否権」または「拒否」、動詞で提案、議案などを「拒否する」の意味になりますが、これも政治関連の記事ではよく出てくるボキャブラリーなので、おさえておいたほうがいいですね。

アメリカ

image by Ally Thomas

アメリカは、三権がかなりの割合で分立しています

日本やイギリスのように、議院内閣制をとっているわけではないので、立法と行政がくっついていません。

“legislation” を「連邦議会」が、”judiciary” を「連邦裁判所」が、そして “executive” を「大統領」が引っ張っていきます。

アメリカの大統領は、法案を議会に提出することはできませんし、議会に参加もできません。



議会 “congress” で決まったことに対して “veto” を持ってはいますが、こうなった場合、議会の両院 (上院 “the Senate” と下院 “the House of Representative“) で、3分の2以上の多数で再可決された場合、その議案は大統領のサインなしで法律化させることができてしまいます。


あと、「おい、コラッ。お前んところとは戦争じゃ!」と、いくら大統領が息巻いたところで、戦争するかしないかの決断権は、議会が握っています。

ただ、「ちょっとここオーバーラップしてんのちゃうん?」というポイントを1つ上げるとすれば…


副大統領 “Vice President” は同時に「上院議長」を務めているってことになっているのですが、普段は大統領のアドバイザー、議会や国民を説得する役割で忙しいため、上院議長のポジションには仮議長という形で多数党の議員がその椅子に座って代行しています。


しかしながら、

上院で採決が可否同数になった際には、ケリをつけるために副大統領が上院議員長となって最後の一票を入れるために現れる。


という部分に関しては、 “executive” と “legislation” がつながってる感がありますかね。

image by Marco Oriolesi



とまぁこんな感じで、どの国においても「三権分立」を基本としてはいますが、程度の差はあれ、格ブランチの役割がオーバーラップしているのが現実のようです。


どちらにしても、それぞれのブランチが勝手に暴走しないように、お互いを監視しあって、バランスをとっていこうという構造にはなっているみたいですね。





というわけで、今回は以上となります。


最後に、自分なりに「三権分立」とは何ぞや?に対する答えを、自分なりに英語でアウトプットしてみましょう。



それでは、お疲れ様でした。


コンカズ

*この記事の英語ヴァージョンはこちらから

👉 【Separation of powers】Revising its definition as well as learning some related English vocabularies.《Eigo-jiru vol.29》

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