洋書レビュー

ゲイリー・スティーブンソン著『The Trading Game』のレビューと考察



どうも。コンカズ (@konkazuk) と申します。


21世紀前半にして、今世紀もっとも重要な書籍のうちの1つとなるであろう本を紹介します。


その本とは、ゲイリー・スティーブンソンさんによる著書「ザ・トレーディング・ゲーム」。


2024年の3月に発売されて以来、イギリスを含めた各国で猛烈な勢いでたくさんの人に読まれている本です。



(上がイギリス、そして下がアメリカバージョンのカバー👇)

image taken from Amazon.co.uk
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ザ・トレーディング・ゲーム」は、労働者階級の生まれながら若くしてトレーダーとなり、バリバリ稼ぎまくっていた著者が、自分のやっていることに疑問を感じ、仕事を辞め、現在の活動家になるまでの苦悩と格闘が描かれた、彼の心の中を知ることができる貴重な自伝です。



今日の世界経済において、何が起こっているのかを理解したと同時に、その危機的な状況をみんなに気付いてもらい、共に力を合わせ、早急に食い止めないとヤバイ!と悟ったゲイリーさんは、パンデミックが始まると、即座にYouTubeチャンネル Garys Economics を立ち上げ、発信し始めます。



本の内容的には、他の人がホストしているYouTubeチャンネルの中で、ゲイリーさんが、現在に至るまでの成り行きを語っているビデオクリップの内容と、何ヶ所か重複する部分があるかもしれませんが…

正直なところ、本で読む (またはオーディオブックで聴く) 方が数倍面白く、心に突き刺さります。



と言うわけで、今回の記事ではその理由をまとめています。

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日本人にとって読みやすい!

image by Clement Souchet

なぜこの洋書が、日本人にとって読みやすいかと言うと、それは…

この本のしょっぱなの場面が、日本のレストランから始まり、さらに後半の4分の1は、日本が舞台となっているからです!



知っている地名や文化などが本の中に出てくるといった、ある種の親近感みたいなものは、洋書を読むことに完全に慣れていない方々が、最後まで読み終えるのにグッドな要素だと思います。

日本という国を、文化の異なる外国人の視点から見て、時に美しく、時に面白おかしく描写しているのを、英語で読むのはとても新鮮です。

特に、旅行者としてではなく、シティーバンクのトレーダーとして日本を訪れているゲイリーさんが、同僚たちに「おもてなし」として東京の歓楽街に連れて行かれて、そこで当惑しまくる際の感情描写や、彼の対応の仕方が最高に面白いです。



さらに、本人は淡々と書いていますが、ゲイリーさんが日本語を上達させるために、自ら学べる環境を探して飛び込んでいくアティチュードは、脱帽もの。

読み終わった後、あなたはゲイリーさんのファンとなっているでしょう。

素晴らしい小説として仕上がっている!

image by J.J. Ying

政治、または経済関連の自伝や告白本は、基本的に、出来事が立て続けに並べられるものが多いため、歴史的な知識を得るにはいいけど、正直言って感動が少ない!(アメリカのオバマ元大統領のクソ分厚い本を以前オーディオブックで聴いたことがあるけど、正直つまらん!)



それに比べ、ゲイリーさんの本は小説として仕上がっているため、メチャメチャ面白い!


まず、実際にそうだったようですが、とにかく登場人物のキャラがすごい。

エリート大学を卒業し、教養を身につけた、スノビーでお金持ちのお坊ちゃんたちがカタカタと音を鳴らして働いている他のトレーディングデスクと比べ、ゲイリーさんが働いていたFXトレードのデスクは、それぞれが異なるバックグランドを持ったつむり曲がりの変人だらけ



最年少トレーダーとして入社したゲイリーさんが、これらの一癖も二癖もある、厄介な先輩トレーダー達からトレーディングについて学ぶために、いろいろと作戦を練って近づいていく姿は見ものです。


そして、私たちのような一般人が知る由も無い、トレーディングの職場の日常と裏舞台、莫大なお金の動き、ブローカーとの関係、2008年の金融危機を迎えるあたりの緊迫感が、小説として描かれているため、私たち読者に、状況が手に取るように伝わってきます。

個人的には、この次から次へと登場する人物とのやりとりのスピード感、そして感情のぶつかり合い、そして毎日が見えないまま、ダークな方向へ進んでいく絶望感が、ビートジェネレーションのジャック・ケルアックの小説に似たものがあると感じました。


オーディオブックで聴くのがおすすめ!

image by Jukka Aalho

この本は、洋書で読むほうが (日本語ヴァージョンは来年発売?) 著者の感情の動きがダイレクトに伝わってくると僕は確信していますが、さらに言えば、イーストロンドンなまりのギャリーさんの生の声で内容を聞くのがオススメです

イーストロンドンアクセントと言えば、イーストロンドンが舞台の映画、”Lock, Stock and Two Smoking Barrels” や、”Green Street” などで聞くことができるため、ギャングスターのイメージを持っている方も、中にはいらっしゃるかもしれませんね。(w)



何も飾らす、本人の普段の喋り方で書かれているこの本は、スウェアリングワードの連発。(イースト・ロンドンに住んでいたらごく普通の光景ですが…)



そして、登場人物の1人で、リバプール出身の*ビルさんが泥酔状態でスウェアリング最高潮になっている際の、ゲイリーさんによる、リバプールアクセントのモノマネが最高です。

ちなみにビル(Bill)さんは、ゲイリーさんが同僚の中で最も尊敬するリバプール生まれのトレーダー。
ゲイリーさんが、1週間で8百万ドルを失って、PnL(Profit and Loss)が、4百万ドル越えの赤字になった時に、教科書に戻ってもう一度勉強しようとしたところを、教科書をはたき落として「本当の経済は本になんか載ってねーよ!自分の周りを見ろ!店じまいに、増加するホームレス、地下鉄の広告、オカンの家計状況, etc. を自分の目で見て確かめろ!」と叱りつけて、喝を入れてくれた恩師。



さらにオーディオブックで聴くと、ゲイリーさんの日本語の発音がとても上手なことがわかります。


この緩やかな日本語をプロナウンスする時と、緊迫した場面での、ネイティブのコックニーアクセントで話す時の、口調のギャップがすごくいいです。

まとめ

以上のように、この本は小説として出来上がっているので、本質的に彼のYouTubeチャンネルとは、タイプが異なります。

この本を通して、ゲイリーさんが実際に経験してきたこと、悩んだこと、憤慨したこと、絶望したことを共感できたのなら、彼がいかにYouTubeチャンネルを通して、本気で世界を救おうとしているかが、さらに深く理解できると思います。



そして最後が超カッコいい!


何が正しくて、何が間違っているかなんて、俺にはわからん。

もう勝負なんてどうでもいい。だけど、次は俺1人で戦うべきでは無い。次のゲームは、君もジョインしてくれ。


と言う、感動の締めくくりです。



(ちなみに謝辞まで、もれなくカッコいいです。)



と言うわけで皆さんも、ゲイリー船長の船に飛び乗って、未来を取り戻すための旅に出かけましょう。

興味が湧いた方はこちらからどうぞ。👇

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最後に、ゲイリーさんは、自分を曲げられない真っ直ぐな人で、頭が良くて、ピストルズな人で、humbleな精神を持った、今の時代に正義を通せる稀な偉人だと思いました。



それではまた。

コンカズ

*この記事の英語ヴァージョンはこちらから
👉 Review and Analysis of “The Trading Game” by Gary Stevenson

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👉 貧富の差拡大を阻止するエコノミスト、ゲイリー・スティーブンソンの活動

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